京極夏彦『魍魎の匣』上・中・下(講談社文庫・分冊文庫版)

 分冊文庫版 魍魎の匣〈上〉 (講談社文庫) 分冊文庫版 魍魎の匣〈中〉 (講談社文庫) 分冊文庫版 魍魎の匣〈下〉 (講談社文庫)

 …いや〜。
 面白すぎるっ。
 面白すぎて、毎回一気読みしなくてはいけないから、困ってしまうのである。
 うちの区の図書館では、以前は、上中下とか、分冊になっている作品をリクエストした場合、全巻揃うまで取っておいてくれたのだが、4月から、届いたものから貸し出すということになってしまった。
 故に、この『魍魎の匣』は、上・中・下を同時にリクエストしたら、下巻だけ届き、上・中は予約順が2番目、つまり下巻の貸出期間中には届きそうになかったので、泣く泣く一旦下巻を返し、上・中が届くのを待つ…という状況になってしまった。そして、思ったより早く上・中が届き、即座に下巻を予約、翌々日、下巻が届くとすぐに借り、ようやく、3冊揃えて読み始めた…というわけである。
 ありえないって。この本を、下巻だけ手元になくて読み始めるって(笑)
 (じゃあ1冊本を借りりゃいいじゃん、ということだが、まあ、この分冊文庫版ってのは、前の版を色々突合せてどーのこーの、らしいので…)
 で、本題に入ると…
 うほー。今回も最高だったわ。現実逃避とはこのことね(笑)。いやこんなに楽しませてくれる作品は滅多にない。
 前に、『姑獲鳥の夏』の感想で、「1人でも1本作品が書けるような探偵役が2人も出てくる、贅沢だ」というようなことを書いたが、それに若干付け加えさせてもらう。
 1人で主役を張れるような探偵なのに、必ず揃って登場しないといけないように、余りにも上手く作られている!そこがミソでもある!
 今回は、前作よりも、途中までの別行動ぶりがはっきりしていて、京極堂は、上巻も結構進んでからの登場である。勿論、別行動していてもイライラはしない。十分に面白い導入部。
 何かを持って旅する(作中作として、箱を持った男と列車の中で一緒になる、という一人称の小説が登場する)…と言えば、やはり乱歩の「押絵と旅する男」を思い出した。
 その他、物語についてちゃんと説明できる能力はないので、ここでいきなり、山口雅也さんの巻末解説の言葉を借りると、「豊饒ではあるが、難解ではない」。
 うーん。流石解説。この一言に尽きる。
 読む前に何年も、さんざん噂には聞いていたし、あの「レンガ」と呼ばれるノベルス版の見た目も知っていた。だから、さぞや薀蓄が長いのだろう…さぞや読みにくいのだろう…と、逆に、むしろそういうハンディに挑戦するような、自虐的な思いでこのシリーズに遂に手をつけた私、だった。
 だが、何のことはない、またも、面白いシリーズに出会った、ただそれだけのことである。
 豊かで、楽しく、お腹いっぱ〜い、なのに、読んでてちっとも難しくない。
 だから、また次がすぐに読みたくなってしまって、困るのである。
 次作と、次次作は、リクエスト済みで、今回は一度で全巻揃った。さあ読め、である。
 (『姑獲鳥』が混み合っていたのは一番有名なせいか、そしてこの『魍魎』もそうなのは、映画になったばかりで、DVDも出るか出ないかという、丁度ホットな時期だからでしょうかね。)
 今から、もう、今出ている分を読み終わってしまったらどうしよう、と哀しくなる。 
 この『魍魎』は、DVDも借りる予定。
 監督が代わったので(実相寺監督、残念です)不安はありますが、まあいいんです。原作ファンは映画をひどいといいますが、私は逆に、原作がこれだけ面白いんだから、映画はもう、どーだっていいと思ってます(笑)。思ったよりよければそれでよし。「何コレ?」でも、別によし。映画版にこれほど寛容な姿勢で臨めるほど面白い原作ってのも、他にないな。
 …私は、堤真一の着物姿がずっと見られるというだけで十分(笑)