京極夏彦『百器徒然袋―雨』(講談社文庫)
文庫版 百器徒然袋―雨 (講談社文庫) | |
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明るい。絶対に明るい話の方がいい、という人は、こっちのシリーズの方が好きになるかも。
主人公は代わって榎木津礼二郎ですが、おなじみの面々も登場します。
で…
「同じ世界で、榎木津中心で書かれた短編集」
ということは頭ではわかっていて読んでみたのですが、どうにも…読んでみて…位置づけが難しい。こんなに難しいとは思わなかった。
スピンオフ、ではない。全く同じ世界同じキャラクターほぼ総登場なんだから。
京極堂も「妖怪シリーズ」とは違って明るくて可愛いのですが、かといって、「榎木津が受けた=『ぼくの仕切りだ!』宣言をした事件だと京極堂が可愛くなるの法則」というわけでもない。だって、扱う事件がこのシリーズなら明るいというわけではなく、暗いし(特に第1作)。
だから…つまり、事件の根本はやっぱり「妖怪シリーズ」同様妖怪なのに、何でこんなにノリ…そう、「テイスト」ではなくて「ノリね」…が変わっちゃうんだろうと。
ただただハチャメチャで、暗い事件なのにひたすら榎木津が明るくて破天荒で、他の連中も「ハイハイ」と呆れながらもノリノリで(特に京極堂)…という話。
何とも、位置づけることも解釈するのも不可能。
ま、その不可能さが榎木津なんでしょうな。
彼が主人公だからこそ、このシリーズは全く捉えどころがないんでしょうな。
(敢えて言うなら、京極堂は結構、人の事件にノリノリで参加する時は別人なまでに明るいのね、ということはあるけど)
で。
元々この榎木津ってのは、「妖怪シリーズ」中での「状況破壊神」なわけですが、この「徒然袋」だと、単純に、
「物理的破壊神」
になっている!(笑)
文字通り、モノを壊す!
通った後にはペンペン草も生えない!
でも、ちゃんと事件は解決する。
不思議だ。
実に不思議だ。
やはり、榎木津とははかりしれない男である。はかりしれない男が別の主人公にくっついているのならまだしも、メインになったらとんでもないことになった。という話である。
「鳴釜」「瓶長」「山颪」の3編。「鳴釜」は、偶々「絡新婦の理」前半の直後に読んだということもあって、女としては重いネタが続いてしまった。