加部究『大和魂のモダンサッカー クラマーとともに戦った日本代表の物語』(双葉社・サッカー批評選書)

 大和魂のモダンサッカー―クラマーとともに戦った日本代表の物語 (サッカー批評叢書)
大和魂のモダンサッカー―クラマーとともに戦った日本代表の物語 (サッカー批評叢書)
 最寄の図書館の新着コーナーにあったので、フリで借りた本。
 クラマーさんの名前は、1年か2年前に、当時の勤務先が出していた雑誌のコラムで知って、
「へー、日本のサッカーの近代化は、ドイツ人のお蔭だったんだー」
と、ムフフになって…それっきり(笑)
 クラマーさんというのは、日本に特別コーチとして招聘されたドイツ人で、日本をメキシコ五輪銅メダルに導いた人物。
 つっても、私も知ったばかりだし、知ってたよ〜んなんて人は少ないだろうなあ。更には、日本のサッカーマスコミはドイツに冷たいしね。
 今回読んでみまして、まず日本代表のローマ五輪頃から現在までの歴史の勉強になり、かつ、大事なことは既にクラマーが全て実践していたことを知り、あとがきにある通り、「もう一度クラマーに戻るべき」(前JFA会長岡野氏)かもなあ、と思いました。凄く乱暴にまとめちゃえばね。
 一つのことが本当に前進するには何十年とかかるのは当たり前だし、しかもその何十年というのは、間に何十年毎かの後退も含んでいて、大変なことだとあらためて思いました。
 あと、結局はドイツ人と日本人の気質は合うんだなと。この本にもある通り、クラマーさんが成果を挙げることができなかった国もあります。何でも、日本は「アジアのプロイセン」なんだそうで。プロイセンは、ドイツの中でも特に勤勉な地域なので、日本人がそれに喩えられてるぐらい、ドイツ人と日本人は似てるらしいです。
 日本を理解し、自ら先頭に立つタイプの外国人指導者。サッカー後進国への指導、そして外国人という二重の壁を、運命のごときパワーと身軽さで越えて見せた男。この出会いは本当に奇跡ですねー、と、素人の私なぞはあっさり感動しておりました。
 内容は、ドキュメンタリーなので読みやすいです。インタビューで、日本サッカーを支えてきた懐かしい人が沢山出てきます。中でも、岡野さんって凄い人だったんだなーと初めて知りました。
 先日読んだ『日本人はなぜシュートを打たないのか?』も、ドイツサッカーを採り上げた本ですが、できればこの本と一緒に読むと、更にドイツサッカーの気質や日本サッカーのなすべきことがわかると思います。
 結局2002年から2006年の日本サッカーって何だったんでしょうねえ。これだけ昔の人たちが既に頑張ってきたのに、未だに、日本は日本のサッカーをすればいいのだということをどうして貫けないんでしょうねえ。
 両方の本で、オシムさんについても言及されてますが、何か監督人事には色々あって結局なかなかよさそうな落とし所を見つけた途端にオシムさんが倒れ…でも、そもそも以前に岡田監督の才能を見抜いたのは更迭された加茂さんなんだとこの『大和魂』にはあります。そう、加茂さんも含め、今の日本サッカーで既に指導者やらトップやらになっている人はみんなクラマーさんの蒔いた種なんだそうです。凄いなぁ。
 とまあ、私はあくまで普通にサッカーを見ている素人なんで、ざっと歴史がわかって「へー」でしかないのですが、…何だか同じ所をぐるぐる回りながら、それでも少しずつ進むものなんだなあ何でも、と思いました。