金城一紀『映画篇』(集英社)

映画篇
映画篇金城 一紀

集英社 2007-07
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おすすめ平均 star
star映画の力、魔法の力
star物語の力、金城さんの力
star一夏の一冊に

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 これもめっちゃメジャーで、恥ずかしかあ。
 これも…待ったね(笑)。半年ぐらい。大分前に『対話篇』の方は結構早く届いて読めて、そっちはブログに移したっけな…まあいいや。(それと、ほぼ同じ体裁かつ対になる感じがするのに、『対話篇』とは版元が違うのは何故?特に理由はない?)
 『対話篇』同様、同じ場所や共通するキャラクターを含む連作短編。全ての話をつなぐのは、公共施設で無料上映された「ローマの休日」。
 こういう、各ストーリーでドキドキさせてくれて、かつ、さりげなくだがしっかり全体が構成されている連作って…ぶっちゃけ、書いてみたいですね。それぐらいの力が欲しい。
 どのストーリーも、登場人物は映画に動かされている。力をもらったり、自分の好きな作品を好きな人に届けたいと思ったり。
 私も含め、多くの人が、昔はそうだったとしても、段々と、映画でも小説でも歌でも、とにかく他人が作った架空の作品なんかに影響されるのは子供っぽい、と思ってやめるのではないだろうか。つまり、他人に影響されることをどんどん嫌うようになるのが、齢を取るっていうことなのではないだろうか。それは物理的に年月が経つということではなく、いい齢の取り方ではないが最もよくあるパターンというか、齢を取ることがイコール硬直であるという齢の取り方。わかるかな。
 私は高校生ぐらいまでは何とか、他人の作品に影響されることがあった。でも、段々と、そういうことが子供っぽいというか、そんなものに影響されたぐらいでは叶えたいことは叶えられないとわかって、やめた。それは他人の作品に影響されること自体が悪いのではなくて、自分に力があれば、他人の作品に力をもらって何かを叶えることができるけれども、自分がゼロなのに何をかけてもゼロだと気づいたのである。自分がゼロなのに何かに影響されて(乗せられて)「やれる」と思っては失敗するのが嫌になったわけで、だったら実力つければいいのに未だにつけてないという(笑)。でも齢は取ったから、もう滅多に他人に影響されることがなくなった、つまりはよくある大人ってことである。昔からもっと力があればなあ(笑)。そうしたらもっと、他人が力を込めたものをちゃんと役立てることができたのになあ、と、よく色んなものに影響されていた頃を思い出しながら思った。