柳広司『漱石先生の事件簿 猫の巻』(理論社)(読書日記)
漱石先生の事件簿 猫の巻 (ミステリーYA!) | |
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ミステリーYA!というシリーズの1冊。つまりヤングアダルト、つまり軽め。
確かにこの人にしちゃあ軽めである。というか、普段のこの人のが、いつも言ってるけど、重すぎ(T_T)。何の気なしに読み始めたらすんごい規模の(怖い)話に展開するんだよう(T_T)
今回も、一見ギャグ調ですが、余りにも有名なのに実は謎だらけの本家『我輩は猫である』そのものの謎も生かしつつ、可笑しさありこの人らしい”影”ありになっております。
この人っていえばやっぱり『贋作「坊ちゃん」殺人事件』ですが(私が最初に読んだのもこれ)、これも結局すんごいでかい話になった。『坊ちゃん』にせよ『我輩』にせよ勿論漱石が明治の人で舞台も明治なわけですが、今回の本ではチラリと中国の近代史が出てきます。
この、日本の明治・大正・昭和初期と中国の大動乱期の関わりって、面白いんですよね!
明治と孫文。大正デモクラシーが中国からの留学生に与えた影響。大学院時代、中国からの留学生が研究していた(今も彼は研究員として論文を発表し続けている)のもこのあたり。そういえば、大正から昭和初期にかけての大陸事情を日本の話に絡めてくるのは久世光彦さんも好んだ手法でした。
軽め、だけど決して浅くはない、ちょっと考えることもあってドキッとする作品です。
「猫の巻」ということは、このシリーズは続いちゃったりするんでしょうか!?そうだといいな。