柳広司『百万のマルコ』(創元推理文庫)(読書日記)
百万のマルコ (創元推理文庫 (Mや3-4)) | |
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いや、柳作品といえば、最初に一見普通の推理小説のように事件が起き、普通に犯人を解き明かす…のみならず、最後の方でとんでもないスケールの話になっていくのがパターン。
ま、今回も、巻末解説(あんまり上手くないけどね。某有名翻訳者なんだけど)によれば(というかこの人の深読みでは)、ちょっと大きなことも言っているのではないか…というんだけど、そこまでは、ねえ。
愉快な「推理知恵遊び」連作短編集。文庫オリジナル。
13世紀、ジェノヴァの牢。身代金を払ってもらえず、出るあてもない囚人たちの前に現れた、みすぼらしく小柄な老人―――彼こそがあの、マルコ・ポーロ。17年に亘って大ハーンに仕え、莫大な富を手に入れた・・・筈の、男。ヨーロッパに帰り着いた彼もまた、他の囚人たち同様、商船同士の争いに敗れて「戦争捕虜」としてこの地にいたのだ。
彼が語りだす、ハーンの命じる難題、想像を絶する異国の地の冒険。そして必ず、解決不可能な謎が・・・
マルコは、与えられた難題をどうクリアしたのか?囚人たちがいくら知恵を絞ってもわからない。
この謎解きが、要は頭の体操のような感じ。推理というよりはやはり知恵遊び。わかってしまえば、ああなるほど、だったり、よく思いついたなあ、だったり。
死ぬほど退屈な牢の日々から束の間連れ出してくれるマルコの物語は、勿論、同じように読者を日常から連れ出してくれるもの。
タイトルの「百万の」というのは、「百万長者の」という意味と、「ほら吹きの」という意味の両方にかけた、実際のマルコのあだ名だそうだ。知らなかった〜。
このマルコ・ポーロというテーマもやっぱり上手い。いつもの柳さんの二重三重構造が今回も生かされている。『東方見聞録』なんて、名前は有名でも全部読むこともまずないだろうけど、そこでマルコが語ることと、この謎解きの物語、どこまでホント?どこからフィクション?…まあ、今回は他の作品に比べれば、明らかに日本と思われる国に関するマルコの報告なんかは『東方見聞録』とは違うだろうとわかるし、境界線探しはそんなに難しくない。しかし本当に、非現実に連れて行ってくれることは確か。
この柳さんについては今までにも何度かレビューしています。大好きな作家です。素晴らしいリサーチ能力プラス最終的力技。そのどちらを欠いても、迫力ある物語は書けないものだと思います。(ま、そういう点は山田風太郎とかも一緒なので、結局はすごく私好みの作家ってことですけどね)
『はじまりの島』、『黄金の灰』、『饗宴(シュンポシオン) ソクラテス最後の事件』という代表作(私は単行本で読みましたが)は、同じく創元推理文庫に入っていますね。手に入りやすくなりました。お勧めです。
探偵はダーウィン。これもスケールの大きな話だった。
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初めて読んだのがコレで、「うわーーー」と、やられた。何でそんな大きな話になるのー、と。
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あっ…『新世界』は角川文庫に…これも…読め…読むべし…!!
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