柳広司『トーキョー・プリズン』(角川書店)

トーキョー・プリズン
トーキョー・プリズン柳 広司

角川書店 2006-03
売り上げランキング : 22456

おすすめ平均 star
star構成は確かに緻密だけど。。
star人間の心も描いたミステリー
star読み応えあり

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 『百万のマルコ』に続いて、またも牢獄モノです(笑)。
 あらすじは、リンク先(アマゾン)でどうぞ。
 よくできてはいるんだけど、できすぎともいえるし、この人にしては何のヒネリもなかったな、というのが正直な感想。
 いつものような「ええっ、こんなデカい話に!?」という、展開の広がりがない。
 この本の存在を知ったのは、1ヶ月前ぐらいに読んだ、成蹊大学文学部学会『ミステリーが生まれる』(風間書房)で、この作品と『新世界』が、「唯一の『戦争ミステリ』である」と評したくだりがあったから。
 「ミステリ作家による、戦争を舞台にした作品はいくつもあるが、それらは全て「推理小説」とは言えない」というような内容でした。例として挙げられているのが山田風太郎の「島」シリーズや『太陽黒点』。確かに、戦時中が舞台だったり戦争をテーマにはしているけど、純然たる「推理小説」かというと、ちょっと違う。
 で、読んでみて、確かに、戦争をテーマにした純然たる推理小説はこれと『新世界』だけだと思った。イデオロギー語りでも不条理小説でも冒険小説でもなく、100%推理小説だ。
 だが、だからこそ逆に、戦争の孕む問題や矛盾(東京裁判のあり方、無差別爆撃はアメリカもやったのにそれは「人道に対する罪」ではないのか、etc.)も、一応登場人物たちの口から出させてはいるけれど、あくまでそれだけにとどまっている。
 捕虜虐待というと負けた日本ばかりが言われるが、シンガポールでの英国による日本人捕虜への虐待を指摘しているのも、山田風太郎の作品に同じくだりがあったのを思い出させる(タイトル何だったかなあ)。
 『新世界』はもとより、これまでの、とんでもなくビックリさせてくれた作品ほどの驚きや怖さはない。ひたすらに手堅い推理小説である。ただ、推理小説としても、ちょっとわかりやすすぎるが。細かい仕掛けも色々してあるしそれが全部解けるのは気持ちいいには気持ちいいけど、まあとにかく、まとまりすぎな感はありますねえ。

 ※以下はあくまで私の推測です※
 最初の方に出てくる、囚人が釘を大量に飲み込んで、開腹手術をさせるために刑務所を出るって…某10チャンネルの某超有名刑事もので、元検事の死刑囚が脱獄するのに同じ事をしてたな…この本の方が先だから、パクリか?
 (以前にもこの局は、歴史クイズ番組で、元宮内庁の料理人渡辺さんの著書の内容を使用して何のクレジットもしなかったことがあるしな)

ミステリーが生まれる (成蹊大学人文叢書 6)
ミステリーが生まれる (成蹊大学人文叢書 6)成蹊大学文学部学会

風間書房 2008-04
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