池波正太郎『梅安影法師』『梅安冬時雨』(講談社文庫)

梅安影法師―仕掛人・藤枝梅安〈6〉 (講談社文庫)
梅安影法師―仕掛人・藤枝梅安〈6〉 (講談社文庫)池波 正太郎

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star長編

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梅安冬時雨―仕掛人・藤枝梅安〈7〉 (講談社文庫)
梅安冬時雨―仕掛人・藤枝梅安〈7〉 (講談社文庫)池波 正太郎

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starもしも願いが叶うなら
starなんと表現したらよいのか・・・
star未完で終わったのは、残念です。

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 今日読んだ。何かちょっと『影法師』の方は集中できなかったので忙しく話が展開していったなあという印象。
 『冬時雨』は作者死去のため未完。ただ、これも動きがめまぐるしいしこれまでの伏線的キャラクターも総登場で、偶然ではなくやはり作者が最終作と考えていたのだと思う。作者の焦りを感じるし、梅安も齢の割には死に急いでいるような台詞が多い。解説の縄田一男氏は、「まともな死に方をできないはずなのに、作者の死によって死が描かれなかった、悪運の強い男」というようなことを書いているが、結果的には確かにそうだ。まあ梅安や、彦さんが死ぬシーンは見たくないものなぁ。
 最終作で主人公が家を建てる、というのも何か象徴的だ。もしかして心理学的には作者にとっては「墓」のメタファーだったりするのかな。
 ただ、この一作が完結していないのは惜しまれる。終われば本当に、「悪漢小説」(裏表紙より)の金字塔になったかもしれないと思う。悪漢小説は悪漢小説なのだが、これを外国語で言ったところの「ピカレスク・ロマン」そのもので、悪漢なんだけどロマンだった。悪と正義が、平時と非常時が、背中合わせ、綯い交ぜに目まぐるしく変転するストーリーの中で、正義も平和も光っていたからだ。あれよあれよと最強チームになっていく梅安、彦次郎、十五郎は、あとどれぐらい3人で生きて行ける予定だったのだろう。もし完結していたとしても、この『冬時雨』も、梅安は死なないで話が終わって欲しい。

 未完の『冬時雨』には作者インタビュー「梅安を語る」収録。
 ここでもまあ、池波先生というのはよっぽど「包丁のない家」が引っかかるらしく(笑)、「どうやって沢庵を切るんだ」「そんな家は沢庵を買わないんだな」「ハサミって何だ」と立腹というか揶揄しきり。こうまで言われると、前の記事にも書いた通り、むしろ江戸時代の長屋、つまり当時最先端のライフスタイルであったところの女性は、包丁を持っていなくたって何の不自由もなかったという事実を知っていたのだろうかと思う。じゃあ、そんな、包丁もない家の女性は、時代小説なんか読まないだろうから、あなたの言ってることも知らないよ、いくらぶつくさ言ってもいつまでも平行線だよと言ってやりたくなる(笑)。だってしつこいんですよこの「包丁のない家ネタ」。私は、どちらかといえば料理好きな主婦ですが何か?(笑)今日(読んだのは14日なので14日にしてあるが、書いている今日は15日)も粕汁を作るために、鮭のアラを調理ハサミでぶった切りましたけど何か?(笑)
 嫌いじゃないんですよ、むしろ読み始めたら止まらない読者の1人だし、本格的に料理が好きになったのは『鬼平料理帳』(という本があるんです!)だし、池波作品の料理の本は全部持ってます。

池波正太郎・鬼平料理帳 (文春文庫 (142‐34))
池波正太郎・鬼平料理帳 (文春文庫 (142‐34))池波 正太郎

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