寺尾紗穂『評伝 川島芳子―男装のエトランゼ 』 (文春新書)
評伝 川島芳子―男装のエトランゼ (文春新書) | |
寺尾 紗穂 文藝春秋 2008-03 売り上げランキング : 36905 おすすめ平均 「評伝」というより「ノート」 冷静に事実を積み重ねた評伝。良書だ 事実は小説よりも... Amazonで詳しく見る by G-Tools |
こういうテーマに修士号を出すとは東大も粋になったもんである。
昨年12月に今度は川島芳子がドラマ化され、見た。クレジットを見ると、村松友視の小説が基だそうである。ドラマになるというのにやはり未だに小説が根拠だというのがやっぱり彼女である。その後でその「原作」を読んだが、架空の小説で彼女を死刑に追いやった作家の孫が書いたものもまた小説という額縁をかぶせたもので、ああ人間はやはり自分のことは自分で正しく書き残しておかないと誰も責任は取ってくれないものなんだなあとあらためて思った。まあどう書き残す言い残すよりもまず生き残ることだけれど。同時代で密接な関係にあった山口淑子さんは正にその両方を果たしたわけで、本人の言による「決定版」の自伝があるわけである。
ということで、この本は、これまでの多くのフィクションも正しく資料批判し、唯一の評伝である上坂冬子『男装の麗人 川島芳子』も参考にしつつ誤りを正し、きちんと事実を積み重ねたものである。
100年かかったって、200年かかったって、少しずつ事実が明らかになっていくのなら、それでいいのだ。
男装の麗人・川島芳子伝 (文春文庫) | |
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