京極夏彦『陰摩羅鬼の瑕』(上・中・下)(講談社文庫)

分冊文庫版 陰摩羅鬼の瑕(上) (講談社文庫)
分冊文庫版 陰摩羅鬼の瑕(上) (講談社文庫)京極 夏彦

講談社 2006-09-16
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 決して楽なのではなく、昨日もそうだが、痒み(耳鼻科でもらった抗生物質に当たって薬疹が出た)を紛らわすために読んでいたのである…。
 今回も、犯人が誰なのか、その動機も、全てを示す枠は最初からあんなにもでかでかと示されていたのに、中で起きていた事件に気を取られて気づかなかった。まあ毎度、京極堂が説明を始めれば、途中で「ああ」とわかるんだけど。でかすぎる罠は見えないということか…。面白いけれど可哀相な話ではある。でもこういう特異すぎる設定を無理なく最初から積み上げていく書き方がやっぱり上手いんだなあ。ただ、初期作品ほどの衝撃とか達成感はなく、やっぱり肩透かし感はある。推理小説において「面白い」とはまず結末まで読者を引っ張ってこれれば一次審査合格で、それでもう十分、科挙においては郷試(地元で行なわれる選抜試験)に合格したってだけで十分有難がられるのと同じぐらい価値があるんだろう。
 しかしこれを読まずに間違って先に次の作品『邪魅の雫』をこないだ読んでしまったので、その作品に「白樺湖の事件」と書いてあっても何のことかわからなかった。このことだったのね。しかも共通する人物が登場して重要な役目を担っていたのに!
 それにしても、今やリゾート地たる白樺湖が人造だったとは知らんかった。