芦原すなお『雪のマズルカ』(創元推理文庫)
雪のマズルカ (創元推理文庫) | |
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いやー面白かった!ちょっと興奮気味に言いたいぐらい面白かった!
巻末の解説でも言われている通り、これは日本で唯一の女性探偵ハードボイルド。ただの女性探偵じゃない。謎の死を遂げた旦那(いい加減な男ではあったけれど)、残されたのは家賃を滞納した事務所と拳銃。
ええ。このヒロインはあっさり人も殺します。イマイチ、日本では外国のようなハードボイルドな探偵ものが書かれないのはこの「銃の所持」の一点ゆえなんですが、は?何ですかその制約?とばかりに、あっさりと、普通に、ハードボイルドしてくれちゃってます。
勿論ただそれだけじゃなく、連作4編なのですが、物語も語り口もいい。私はこの作家を既に”台所探偵”ものの『ミミズクとオリーブ』シリーズで、ゆるいようでいて実は凄く怖い作品を書ける人だと思っていたのですが、本当に、怖いものをしれっと書いてしまう人だということを確信しました。ゆるい文体に騙されてはいかん。この『雪の』では、文体もそんなにゆるくはないですが、何かほわわんとした雰囲気を持っている作風なのにこのめっちゃハードで乾いた内容は何やねん!という不思議な裏切りを味わい、後はもう一気でした(そんなに厚い本でもないんですが)。
ただ、解説の方は「女が憧れる女」と書いていらっしゃいますが私はそうとは思いませんね。あくまで他人は他人。そんな女はいないと思ってますので(笑)。ただ、台所探偵の奥さんはちょっとカマトトのように思えて気に入らないのでこっちのヒロインの方がいいというだけ。台所探偵は、話を聴くだけで犯人を当てる能力があるのに、ちょっと残酷な話になると「聞きたくないわ」。てーめーえー!!そういう能力持ってんならグロい話だって聴けよ!上品ぶってんじゃねえよー!と、自分が単にはしたないだけなんですがイラついたりするのです。
ミミズクとオリーブ (創元推理文庫) | |
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