菅浩江『永遠の森 博物館惑星』、『五人姉妹』(早川文庫)

 それぞれ独立した短編集ですが、『永遠の森』の続編が1つ、『五人姉妹』に収録されています。
 

永遠の森  博物館惑星 (ハヤカワ文庫JA)永遠の森 博物館惑星 (ハヤカワ文庫JA)
菅 浩江

早川書房 2004-03-09
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おすすめ平均

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 えらく久しぶりにSFを読んだ…というか、私にとって、読んだSFの冊数自体まだ両手の指に足りないのであるが。
 面白かった。読んでよかった。
 だって、自分がいいと思ったこと、素敵だと思ったものを理屈で説明するなんてことがいかに馬鹿馬鹿しいかを教えてくれている本なんだもん。
 舞台は、星1つが宇宙のあらゆるものを集めた博物館になっている惑星「アフロディーテ」。主人公はそこに勤める日系の学芸員。9作(うち1作は書き下ろし)の短編連作で、1作目から張られた伏線は9作目までできちんと回収されるようになっている。
 絵画、音楽、工芸、動植物など全てのジャンルを扱うこの博物館惑星で、主人公に持ち込まれる、芸術をめぐる様々な難題。
 1つ1つの話は確かに謎解きではあるが、あくまでも美と人間についての物語であって、「推理作家協会賞」はやや無理がある気がする。けれど、賞のカテゴリが問題なだけで、内容は普通に考えて、とてもいい物語である。
 だから、こういう風に言葉で説明はしたくないんだってば。
 ただ、主人公の奥さん、この奥さんとの関係も全体を通じて描かれる重要なテーマなのですが(というか、これがキモ?)、「無邪気な女性」ってのは、個人的にはいただけない。私は、「無邪気な女性」なんて存在しないと思っているので(笑)。とはいえ、これは、作者がそういう女性を理想の女性としているとかそんなことでは勿論なく、物語の中で必要だからそういう造形になっているだけなのはわかります。個人的に、奥さんが嫌いなだけ。
 
五人姉妹 (ハヤカワ文庫JA)
五人姉妹 (ハヤカワ文庫JA)菅 浩江

早川書房 2005-01
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おすすめ平均 star
star心の底にしずくが落ちるような
starSFといえどいつの世も人の悩みは同じことを痛感する作品!
star心にしんとしみわたるような・・・

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 一言で言うと…『永遠の森』よりもシビアな短編集。バッドエンドじゃないけどハッピーでもないっていう…SFらしい怖さの話もある…。発想や表現は凄く面白いのだろうけど、暗いのはちょっと苦手かな。特に「箱の中の猫」は、切ないと言えば聴こえはいいが、こんなに哀しい話もないだろう。
 とはいえ、『永遠の森』でも思ったことだが、ホントに何でも知ってる作家だなあ。和洋中(あ、中はないけど)の芸術、文学数学。こういう作家に出会うと、一体何年生きてるんだと思う。つまり実年齢以上に生きているようで羨ましい。ってか1日がホントに24時間なんか?と。