井上祐美子『桃夭記』(講談社文庫)

 

桃夭記 (講談社文庫)
桃夭記 (講談社文庫)井上 祐美子

講談社 2000-03
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 結構借りてんじゃねーか、という突っ込みはなしで(笑)。
 貸し出し期限が火曜日なので、急いで今日2冊読んだのである。知らなかったんだけどこの短編集が代表作と言われているっぽい。
 これは歴史小説ではなく、チャイニーズ・ファンタジーなので借りた。
 思えば、私が生まれて初めて読んだ中国についての本は、『清代の怪異小説』という、小学校の図書館にあった文学全集の1冊で、『聊斎志異』を子供向けにリライトしたものだった。とにかく面白かった。
 この『桃夭記』もよくできた「志怪小説」だ。筋立てや雰囲気もまんま『聊斎志異』で、キャラクターがオリジナルという感じ。既に確立された枠を使っていても中身が面白いものを書くのは難しいと思うのだが上手く書けているので、元の志怪小説への造詣の深さを感じさせる。
 中国の不思議な話は、教科書にも載っている「桃花源記」とか、胡蝶の夢とか、動植物が人間と同じぐらいの比重で扱われているところがいい。植物の精が出てきても、中国独特の美しさがあり、これも独特の切なさが残る。
 久しぶりに、『聊斎志異』を読んだ時の興奮を、大分ぼやけてはいるが思い出そうとしている。あの後『水滸伝』を読み(あくまで『三国志』ではない)、また興奮した。そうなんだよなあ。この『桃夭記』の明代や『水滸伝』の宋とか、古代が一通り終わって中国といえばでっかい国になり、爛熟した時代、大好きなんだよなあ。そして、結局は、中学高校で紆余曲折はあったものの、好きなことを学んで滅びる道を選んだのだなあ。