顧蓉・葛金芳著 尾鷲卓彦訳『宦官 中国四千年を操った異形の集団』(徳間書店)

 

宦官―中国四千年を操った異形の集団 (徳間文庫)
宦官―中国四千年を操った異形の集団 (徳間文庫)尾鷲 卓彦

徳間書店 2000-11
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おすすめ平均 star
star宦官の真実がわかる!
starわが友、宦官
starたいへん興味深い本ではありますが

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 申し訳ないのだが、最初の方で感じた胡散臭さを最後まで引きずってしまった…いや…割と史料にも当たっている方だとは思うのだが…
 うーん何故、そこまで「偽宦官」にこだわるか…その、最初の方というのが、安得海が偽宦官だったと決め付けて書いている所。これはナンセンス。先日読んだ孫さんの本で、孫さんが、「出仕してからも定期的に検査があるので絶対ばれる」と証言しているにも拘らず、その上証拠もないのに、偽宦官という前提で話を進めている。
 権力者に寵愛された宦官がみんな偽者だったらきりないじゃん…
 まあ、逆に言えば、定期的に検査があったり、この本に言う「三年ごとの小手術」「五年ごとの大手術」というものが本当にあるのだとすれば、いかに偽宦官希望者が後を絶たないかということだとは思うけれど。宮中に入れればうまみも大きいので。
 でもなあ…全体に、簡単に言えば好きになれない本だった。「異常」の面にスポットを当てすぎっていうか。しかし世に宦官本の種は尽きまじで(彼らには種がないけど)、これからも胡散臭くてスキャンダラスなだけの、この本より数段ひどいものは出続けるんだろうけどねー。
 そうだ、「現代医学によれば人の成長は8年ごとに区切りがある」と書いてあるんだけど、根拠は(笑)。この本の著者に「現代医学」とか言われても「古代医学の考え方によれば」にしか思えないんだけど。8歳以前に切っていればまた生えてくるって、何ソレ…ナニだけど。
 そうだ、「宦官の栄禄」って何見て書いたの…。宦官じゃないし…。彼の実の娘が溥儀の母親ですけど!ってかこんな初歩的な知識、日本人の訳者にないのか???
 あと、文体が仰々しくて、いかにも中国語を訳しました、っていう感じ。河出文庫版の孫耀庭伝も同じで、NHK出版の方の孫耀庭伝はかなり日本語としてこなれてた。
 収穫は、「宦官の罪は、重用する皇帝自身にある」と、そう皇帝自身が述べている(by乾隆帝)史料などを基に主張していることと、溥儀と特殊な関係にあったという(これはNHK出版の方の孫さんの本に載ってた。どこまで信用するかは人それぞれだけど)宦官の写真が載ってたことぐらいかな。