倉橋由美子『偏愛文学館』(講談社文庫)

 

偏愛文学館 (講談社文庫)
偏愛文学館 (講談社文庫)倉橋 由美子

講談社 2008-07-15
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 比較的新しい本だったので未読だった。私が倉橋さんの作品をまとめて読んでいたのは2001年〜2002年ぐらいのことで、私が知ったのはその頃とはいえ倉橋さんご自身は体調不良のためもう新作はほとんどない状態だった。小説もエッセイも読んでいたのだが丁度この本の出たのが単行本は2005年だったので見逃していたのである。
 倉橋さんはエッセイで自分の小説の元ネタをあっさりと公表してしまうことでも有名らしい。しかし非凡な作家なので、元ネタがこれこれですと知られたところで屁でもない、というのも事実である。この、自分の好きな作品を採り上げたエッセイ集にも、実は元ネタとして使われた作品も含まれているのだが、どーってことない(笑)。
 この本がいいのは、その語り口だ。面白いと思う作品を褒める言葉も、読むに値しない作品とはどういうものかを斬り捨てる言葉も、小気味いいことこの上ない。この本も、他の本同様図書館で借りたものの、いっそのこと買って抱えて読み返そうかと思ってしまった。どちらかといえば、つまらん作品がどうしてつまらんのかをバッサリと説明してのけている部分が素晴らしい。
 当然ながら?面白い、と挙げられている作品のいくつかは借りてみた。この本が出た頃に読んでいれば、勿論その頃に借りていただろう。古い作品もあって、奇跡的に図書館でも借りられるものもあったが、今では入手不可能(と、倉橋さんご自身わかっていて紹介している)なものもあるのは残念である。