本棚の命題

 先月末から今月にかけて、老骨に鞭打って本棚を整理していて、また1つの命題に気づいた。
 「本棚とは、収蔵庫(パソコンで言うハードディスク)か、作業場(同、メモリ)か?」
 今回の整理以前は、持っている本も資料もなるべく本棚に収めるようにしていた。ダンボールに入れてクロゼットに押し込んであるのは学生時代のノートだとか昔の仕事の書類ぐらいのものだった。
 結婚して本棚を4本買って、自分の分2本に、それまで本専用の倉庫を借りて預けていた本を全部並べた時は、そりゃあ嬉しかったもんだ。
 やっぱり、持っているものを全部一覧できるということは、快感である。
 さーこれでいつでも必要なものが出せるぞ…と。
 が。
 出せないじゃん(笑)
 何で?(笑)
 一杯入れたら、どこに何が入ってるかすぐには探せないぞ。おまけに私は本には全部カバーをかけるし、段によっては横に積んであるから余計めんどくさいぞ。
 そう、キャパシティとは、本棚(ハード)ではなく、自分の脳味噌(ソフト)の問題なのである。
 例え本棚に本や資料が全部収まっていようが、その全量そのものが私の頭で把握しきれない、或いは普段の生活で使い切れないほど多いのである。
 悪魔の囁き、「全部捨てちまえよ…」(笑)
 正直、今回はマジで、見ないで全部捨てたかった…(^^;)
 だってホントに重いんだもん本って!重いダンボールだって何度あっちこっちへ積み直したことか!整理が終わってから何日かは疲れて使い物にならなかったよ…。
 でもなあ。やっぱり、持ってないと困る本もあるし、すぐに眺めたい本もあるし。処分は秋以降どんどんやってきたしなあ。図書館に寄贈した分は恐らく捨てられちゃっただろうってのが哀しいけど、もうしょうがない。
 結局、今回、本棚を収蔵庫として扱うのは諦め、再び、すぐには読まない本はダンボール行き。本棚に並ぶのは、いつも読みたい本だけに限ることにした。脳味噌のキャパと実際の量をなるべく一致させたわけである。
 天井まである本棚の、上の方の棚が空いた。すると旦那が、
「じゃあ引き取って。難民として一時受け入れたけど、場所ができたんなら」
と、以前、所有権を移譲した本を返すというのである。これには「ええっ!!!」とペンディング中。
 かつ、ダイニングと物入れに分かれていた料理本の山も、とうとう、書斎の本棚に集めた。正に「料理の本棚」。困ったことに、料理本もかなりコレクションしているのだ。
 本当は、料理本って、食卓からすぐ手の届く所に置きたいんだけどね…。献立は食卓で作るから…。でもこれもしょうがない。何かちゃんと作りたくなったら、書斎でじっくり本を選ぶことにする。実際、日々のご飯なんて、レシピのノートで済んでしまうしなあ(そう考えると、山田風太郎『あと千回の晩飯』とはよく言ったもので、本当は一食たりとも適当にしたくはないのに、毎回納得のいくものにするのは何と難しいことか)。
 お蔭でダイニングが凄くすっきりしたのはよかった。
 本棚を作業場にしたことで、多分、箱に移された分の本は、「諦めるための時間」を過ごすことになるのだろう。
 二度と出すことがないのなら、手放すことになるだろう。
 公立図書館にその本がありさえすれば、そう悲観することもない。