清水義範『身もフタもない日本文学史』(PHP新書)
身もフタもない日本文学史 (PHP新書) | |
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誰もが知っている、つまり、「日本人ならタイトル(とあらすじ)ぐらいは知っている」ものを挙げての解説なので、その作品を実際には読んでいなくても楽しめるし、読んでいればなお楽しいという本。
やっぱり私と趣味が合うなあ。近代日本文学に現れた「赤裸々な告白至上主義」みたいなものへの違和感が一致。
清水さんだけに(笑)、ある文学作品はその優れた祖先のパロディである、パロディでその子孫にあたる文学は生まれる、という切り口も底流になっているのだが、なるほどと思う。多分そういう、ちゃんと繋がりのある作品の流れというものが日本文学における価値ある作品群なんだと思う。そこで何で近代になって、気色悪い私小説群なんてもんが出てくるのかわからんわ、ホント。
最後の方には推理小説やSFといったエンタテインメント作品群も解説されており、これもまたズバリである。ただ残念なことに、何故か何故か、新しい時代小説・歴史小説・SF・伝奇全ての担い手である高橋克彦先生が1行たりとも触れられていない。師匠が半村良と仰っているのだから、これは物凄い矛盾の気がするのだが。