振り返るのは野暮と承知で―今更自分的観劇ベスト

 クロゼットの中の物を減らすには、そうだ、重複して持っているプログラムを捨てよう!と思った。
 と言っても、重複して持っているのって、四季の「ミュージカル李香蘭」だけなんだが…
 そのついでに、自分の観劇の記録をExcelにつけておいたら、いちいちパンフやプログラムを引っ張り出さなくても、或いはパンフレットは捨ててしまっても、あれはいつ観たとすぐわかって便利じゃないかぁと(しかしそもそもいつそんな記録が必要なんだか)。
 で、その作業を今日やっとやっているうちに、いくつか行方不明のプログラムもあったりして(T_T)、完全にとはいえないが、9割は見つかって、見つからないものは記憶に頼ったり、公演時期を「?」のままにして、いちいちExcelにつけてみたのだった。
 折角だからここにも書いておこうと。
 記念すべき人生初観劇は、これはプログラムも何も手元にないのだが、小学校4年生ぐらいの時に、学校観劇ということで1学年丸ごとで学校から出かけた「冒険者たち」だった。劇団四季のミュージカルで、日生劇場。中2階ど真ん中。この席に再会するのは何と26年後。
 ちなみにこういう風に学校にチケットを斡旋したり、個人にも個人的に早めにチケットを売ったりしている所謂個人営業の人を、四季の「シアター・アドヴァイザー」と言い、後、友人の紹介で何度かチケットを買ったりもしたのだが、結局は、有名なミュージカルでも、ポスターもまだできていないような時に白黒のDMでさくっと案内されて、都合のいい日を第三希望まで連絡してね、と言われても、よっぽど暇な人でないと無理だろう。チケット自体も高いし。観たければ結局「四季の会」の先行予約で買うことになる。というわけで、今は付き合いも切れているし、「四季の会」も、「チケットを何年も買っていない人は先行予約の権利のない、会報だけ取る会員にしなさい」というお達しが出たことで嫌気がさしてやめた。今は無理でも、また行ける日のためにと、情報を切らさないでいるファンの気持ちが全然わかっていないのだ。四季の側にも、明らかに会員が大量にチケットを買ってヤフオクに出すという被害?に手を焼くなど色々あったらしいとは聴いてはいるが、だったらファンを差別するより先にオークション側に苦情を入れればいいのに、という声も聴こえていた。正論だと思う。そして未だにヤフオクでは普通に「劇団四季」カテゴリがある。勿論悪い会員だけが原因ではなく、経費とか色々あるんだろうけど、個人的には裏切られた気がしたので、二度とチケット買ってやるもんかと思ってます(笑)。必ず毎年行ける人だけを相手にしたいんですね、この劇団は。
 暇な人、と言えば、初めて自分で四季のミュージカルを観たのは、これも後輩が四季のお偉いさんのコネでいい席を取ってくれたのだが、「オペラ座の怪人」(新橋演舞場)。この時に、周囲に若い人なんかいなくて、いかにも、「1人1列で20枚まで」という四季の会での購入でしょー、というおばさん集団ばかりだった。つまりは、「子供も手を離れたし〜」な有閑マダムというものが普段何をしているかと、その時知ったわけである。バブル前のいい時代というか、今では四季の客層も随分変わっただろうし(私が観始めた頃は、漸く役者の手売りシステムがなくなりつつある頃だったと思う)、事情も色々だろうが、「観劇」とはそういうものだと、早くも知った。
 以下、この初観劇の小学校4年生から現在までの27年の話。
 わかる限りの記録と記憶では、ミュージカルは17回観ている。うち、四季は10回。
 自分的四季ベストは「オペラ座の怪人」と「日曜はダメよ!」で、「エビータ」が次点。保坂知寿さんの大ファンでした。
 ミュージカル全体でのベストなら、迷わず、「マドモアゼル・モーツァルト」。土居裕子さんもマイベストミュージカル女優。これ、原作(福山庸治『マドモアゼル・モーツァルト』)も、自分の中の漫画ベストである。
 ストレート・プレイは9本。ミュージカルとオペラばっかり観ているという記憶があったのだが、意外と観ている。このジャンルのベストは、これも迷わず「エリザベス」。坂東玉三郎主演。エリザベス1世が実は○○○だった…というトンデモにして絢爛かつ淫靡な大人の物語。鳳蘭岡田真澄に、川崎麻世(笑)と、正に眼の洗濯。そして「友情出演」として、一瞬だけの出番に天本英世!…この、1993年当時15,000円もしたチケット代の出所は、母。うーん。でもこれは本当に見る価値ありすぎな作品だった。
 うちは基本的にお小遣い制ではなかったので、チケット代は結局ほとんど母がくれていた。自分で稼いでない人間が観劇という趣味を持つって本当はおかしなことだなあ、と、気づいたのは大学院2年の時。ごめんよ母。(そして、舞台を観るお金を稼ぐためにのみ、就職を決意したのだった。)
 この、「銀座セゾン劇場」も、「西武美術館」(池袋)がなくなったあたりというか、要は西武が落ち始めて、現在では「セゾン」が取れて「ル・テアトル銀座」となっちょります。京橋の警察博物館のお隣。
 その直後に、同じ劇場で「ワーグナーとビューロー 超人と人」というこれまたストレートプレイ。これは知り合いからチケットをもらって父方の祖母と行った。西村晃吉行和子篠井英介という豪華キャスト!だったのだが、「エリザベス」の半額のチケット代だと、セットも衣装もやっぱり半分だなあ、という記憶しかなくてすいません。いや「エリザベス」の衣装が豪華すぎたのよね…。あと、篠井氏、嫌いじゃないんだけど、私が観る時は必ず1回は噛んでる…後に「西太后」でも噛んでた(笑)。
 ストレートプレイの次点は、この「西太后」(市川猿之助演出、藤間紫主演、新橋演舞場)と、「アマデウス」(松本幸四郎主演、日生劇場)。更に4位としては、あの長い物語を1回の舞台にまとめることに成功したことに敬意を表し、「BANANA FISH」(Axle、新国立劇場中劇場)。
 大学に入ってからハマった京劇は5回。これは大学時代と最初の会社(京劇を日本に呼ぶほぼ唯一の会社「楽戯舎」が、この会社と提携していた。会社が倒産した後、現在も楽戯舎は京劇興行の第一線である)の頃に集中して観たのと、旦那との結婚の少し前に「梅蘭芳京劇団」を観たのが最後。(こないだBS2で「京劇三国志」を観たが、わかりやすくするのはいいが何となく場面場面を繋いだだけという感じがした)
 京劇の魅力については語りきれないので割愛。
 オペラが7回。ほとんどが「魔笛」と「皇帝ティートの慈悲」というマニアぶり。初オペラ「魔笛」は、何と渋谷のBEAMホール!元々多目的ホールで、コンサートもあれば古レコード市もあるという場所だったが、今はすっかりお笑いの劇場になっているようだ。この初「魔笛」で一目惚れした吉田浩之さんは、今でもマイベストテノールである。あれから、日生劇場でも新国立劇場でも「魔笛」は観たが、今でも一番思い出深いのはこのBEAMでの魔笛である。(同じタミーノ吉田浩之&夜の女王ツァイ・イエンガンのコンビは新国立劇場でも観た)
 クラシックのコンサートは8本。「モーストリー・モーツァルト」も、ほとんど行けないまま終わってしまいましたが、あれもやっぱりバブル崩壊が関係しているのかなぁ。ああいう、街そのものが盛り上がるイベントは残して欲しかった。特にワタクシ、映画は観ないので、クラシックの方面で渋谷が盛り上がるイベントがないのは淋しい。個人的にBunkamura好きだし。
 こうして一気に振り返って見ると、片手でちょっと足りないぐらいの最高の舞台と、同じぐらいだけの「過去恥部」にしたい舞台とがあり、後は中間。その中間というのも別に個人的な思い入れはないというだけで、決してダメな舞台だったわけではない。そして「過去恥部」とした舞台の1つからは、かの仮面ライダー主演俳優と、共演した刑事さん役の俳優を輩出しているんだから…驚きだあ!
 私が精力的に(とはいえお財布の許す範囲で)舞台を観ていたのは、大学に入った18歳から、結婚して妊娠するまでの、15年あるかないかの間だった。その間に、映画もちょこちょこ。映画を映画館で観てたのも、やっぱり学生時代とLotR三部作までですね。
 で、結局、重複したプログラムを捨てることもできず(よく考えたら公演時期が違って、中の記事も違うんだから捨てられない…)、捨てられたのは過去恥部の数冊のみ。まあ、年寄りらしく振り返ってみた。そして未来はあるのか。あってほしいものだ。
 今後観たいものはやはりオペラ。それと、余り客に媚びてないがっつりなプログラムが来日すれば、京劇。